評論:成年被後見人の選挙権喪失は違憲ではない

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これまで成年被後見人には選挙権が認められなかったが、この度これを認める地裁判決が出た。
この判決に僕は疑問を抱いているのでここに書く。

「憲法が国民に保障する選挙権を制限することは原則として許されず、やむを得ない理由がある極めて例外的な場合に限られる」と説明。その上で、成年後見人を付けるかどうかで審査されるのは、財産管理能力の有無であって、選挙権を行使する能力とは異なると指摘。被後見人とされた人がすべて選挙権を行使する能力を欠くわけではないのは明らかと断じた。
(東京新聞:http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013031502000164.html)

成年被後見人というのは民法7条が規定する意思能力に乏しい者で、成年後見人が彼らの行為を代理する。
第7条
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、(中略)後見開始の審判をすることができる。

成年被後見人は7条が示すように「事理を弁識する能力を欠く常況にある者」である。


なお事理弁識能力とは以下のとおり。

有効に意思表示をする能力のことをいい、具体的には自己の行為の結果を弁識するに足りる精神的な能力のことである。
事理弁識能力 - 法律用語大辞典 | 弁護士ドットコム


判決では、成年被後見人かどうかの判断は財産管理能力について行われると述べているが、財産管理能力とその他の事理弁識能力が全く別個のものとは思えない。

これは条文が財産管理能力と表現せず概括的に事理弁識能力と表現していることからも明らかである。
事理弁識能力がないから、財産管理能力もないと判断されるということさえ出来るのではないか。

被後見人とされた人がすべて選挙権を行使する能力を欠くわけではない

とあるが非常に疑問である。財産管理能力だけがなくて、その他の事理弁識能力には問題がない人間など、それこそ例外的であろう。


さらに、判決は選挙権を制限することは別の立法で可能だと述べている。

が、この考え方には大きな問題がある。

◆どのように選挙権を行使するに足る弁識能力の有無を判断するのか。
という問題だ。

国側が調査を行うことはほぼ不可能であるし(そのような干渉はそれ自体が人権侵害になりかねない)、自分から弁識能力があるのかの審査を行いたい人間はいない。
しかも新たな調査を行うためには多額の費用がかかることが想定される。

民法の制度を活用して効率よく判断するほうが良いであろう。

国側は「不正投票の誘導が行われる恐れがある」

これだって少しも杞憂ではないだろう。





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